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東京地方裁判所 昭和36年(ワ)9354号 判決 1965年5月13日

主文

一、被告は

原告長蔵に対し金二〇万円、同増子に対し金一三五万八千五六八円五八銭、同輝武、同智代に対し各金一一〇万八千五六八円五八銭、及び右各金員に対する昭和三六年一二月一七日から各完済まで各年五分の割合による金員を支払え。

二、原告等のその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担、その余を被告の負担とする。

四、この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

一、原告等の求めた裁判

(1)被告は原告長蔵に対し金五〇万円、同増子に対し金三二二万二一五円、同輝武及び同智代に対し各金二九七万二一五円、及び右各金員に対する昭和三六年一二月一七日から各完済まで各年五分の割合による金員を支払え。

(2)訴訟費用は被告の負担とする。

(3)仮執行の宣言

二、被告の求めた裁判

(1)原告等の請求を全て棄却する。

(2)訴訟費用は原告等の負担とする。

三、請求原因

(一)民法第七一五条使用者責任の主張

(1)原告長蔵は亡三谷一久(以下被害者という)の父、同増子は被害者の妻、同輝武は被害者の長男、同智代は被害者の長女である。

(2)被告は貨物自動車による一般運送業を営む会社である。

(3)訴外山口義栄(以下山口という)は被告に貨物自動車運転手として雇傭されている者であるところ、同人は昭和三五年九月二一日、被告がその営業に供している1あ四二五二号七屯積貨物自動車に貨物を搭載し、東京方面から横浜方面へ進行の途中東京都大田区東六郷三丁目東栄石油株式会社前庭にある給油スタンドに於て右自動車に給油し、同日午後三時頃給油の後、右自動車を川崎方面に向けようとして急速度で右給油スタンドから国道に右自動車車体右後部を約二九〇センチ、左後部を約一五〇センチ、突出させたため、車道の左側歩道から約一五〇センチの線を自転車に乗つて通りかかつた被害者に右自動車の後部を衝突させ、よつて同人に右側頭部の外傷による脳損傷を負わせ、同日午後三時一〇分頃同人を死亡させた。

(4)山口は右事故発生まで三日間殆んど昼夜兼行で右自動車を運転し極度に疲労していなので助手に自動車の誘導をさせず、自らも後退する自動車の後方に人車の通行のないことを確認せず、偶々約二百メートル蒲田方向にある信号器が停止信号をとつていたため路上に自動車の通行が途絶えていたので、前示のとおり急速に自動車後部を路上に突出させ、よつて被害者に衝突させたものであるから、右事故は山口の過失に起因するものである。

(5)被害者は神奈川大学工学部工業経営科を卒業し、昭和二三年日本鋼管株式会社に雇傭され、入社以来成績極めて優秀、将来を嘱望されていた中堅技術員であり、右事故発生の頃には同社川崎市池上変電所の電気操作事務に従事し、俸給は一か月金三万円、賞与は昭和三四年一二月同年度下半期分金九万円、同三五年七月同年度上半期分金四万五千円を支給されていたので一年間の総収入は金四九万五千円であるところ被害者の生活費は一か月金五千円であるからその純収益は一年金四三万五千円である。被害者は大正一三年二月二三日生の普通健康体を有する男子であり右死亡当時満三六年であるから厚生省昭和二九年七月公刊の第九回生命表によれば将来の生存年数は三二年であり、被害者は本件事故のため右三二年間に得べかりし純収益合計金一、三九二万円を喪失し、同額の損害を蒙つた。

(6)被害者は被告に対し右損害の賠償として右金額よりホフマン式計算方法により、年五分の割合による中間利息を控除した金八一六万六四七円を一時に請求し得るところ原告増子、同輝武同智代は被害者の死亡により同人を相続したので右損害賠償請求権を取得し、その相続分は均等であるので各自その三分の一である金二七二万二一五円の損害賠償請求権を取得した。

(7)原告長蔵は昭和二四年頃以降被害者宅に同居して共同生活をしている宗教家である。

同増子は昭和二六年二月九日被害者と結婚し、本件事故発生時は三五年であり、病身で無職無資産、女性としての教養あるのみで特殊な技術も持つていない。生涯を共に過ごそうと誓つた夫と別れ、幼い子供二人を女手で抱えて人生の大半を過ごさねばならず、その生活は寂寞の境遇を超えて辛苦の生活となることが必至である。

同輝武、同智代は慈愛深き父親を喪い、その生育過程に於いて柱が倒れたような状態であり、各精神上甚大な苦痛を蒙つている。

右のとおり原告はいずれも精神上重大な苦痛を蒙つたので被告に対し、原告長蔵、同増子については各金五〇万円、同輝武、同智代については各金二五万円の慰藉料請求権を有するものである。

(8)原告等は被告に対し右各損害賠償請求権を有するのでこれに対する本訴状送達の翌日である昭和三六年一二月一七日から各完済まで年五分の割合による遅延利息請求権を有する。

(二)自動車損害賠償保障法第三条の主張

請求原因(一)(1)(2)(3)(5)(6)(7)(8)の各事実がある。

四、請求原因に対する認否

(一)の主張に対し

(1)の事実は不知。

(2)の事実は認める。

(3)の事実については山口が被告の経営している貨物自動車の運転手として傭われていたこと、同人が昭和三五年九月二一日被告がその営業に供している1あ四二五二号貨物自動車を運転し、原告主張の給油スタンドで給油したこと、原告主張の時刻頃自転車に乗つた被害者が右自動車に衝突して負傷し、死亡するに至つたこと(但し、死亡時刻は同日午後一一時四〇分頃である)は認めるがその余の事実は否認する。

(4)の事実については本件事故当時停止信号のため自動車の通行の途絶えていたことは認めるがその余の事実は否認する。

(5)の事実については発生した損害額は否認する。その余の事実は不知。

(6)の事実は否認する。

(7)の事実については慰藉料請求権を有するとの部分はいずれも否認する。

その余の事実は不知。

(8)の事実は否認する。

(二)の主張に対し

(一)の主張事実と同一事実に対する認否は(一)の主張事実に対する認否と同一である。

なお(二)の主張は失当である。何故なら本件事故は自動車の運行によつて生じたものではない。即ち自動車の運行とは自動車を原動機により移動させることを言うのであり、従つて停車中の自動車は移動していないのであるから、本件のように停車中の自動車に被害者が衝突した事故は自動車の運行によつて生じたものではない。

五、抗弁(請求原因(二)に対するもの)

山口は給油のため国道から前示給油スタンドに自動車を乗り入れ、燃料補給後川崎方面へ発進するため国道へ出るべく本件事故現場に於いて自動車を後退させたのであるが、同人はその後退にあたつてこれを誘導させるため助手兼補助運転手訴外関吉之助(以下関という)及び右スタンド従業員訴外森正義(以下森という)を右自動車の右側後部に、荷扱手訴外地主武志(以下地主という)を同左側後部に配置し、運転手である山口は進行方向である右後方を注視し、付近の交通信号が停止信号となつて国道上の交通が途絶え路上を通行する人車に危険を及ぼす虞のないことを確認し、人車に危険を及ぼす事態の発生する場合に備えいつでも停車できる速度で右誘導者等の指示に従い、後退し、右自動車の後部右端が約一メートル国道上に出た状態で停止し、右誘導者等の乗車を待ち、一方関及び地主は国道を進行して来る自動車、自転車等の一切ないことを確認した上で先ず地主が乗車し、続いて関が乗車しようとした時に偶々右国道上を通りかかつた被害者が右自動車後部に衝突したものである。

よつて山口は右のような場合に貨物自動車運転手として業務上尽す注意義務を怠たらなかつた。

六、抗弁に対する認否

山口が貨物自動車運転手としての業務上の注意義務を怠たらなかつたことは否認する。

七、証拠〔略〕

理由

一、請求原因事実について

(一)  民法第七一五条使用者責任の主張事実について

(1)  被告と山口との関係について

山口は本件事故発生時に於いては被告に雇傭されている貨物自動車運転手として被告の営業である貨物運送に従事していたことは当事者間に争いがない。

(2)  本件事故について当事者間に争いのない事実

山口が昭和三五年九月二一日午後三時頃、被告がその営業に供しているⅠあ四二五二号貨物自動車(以下本件自動車という)を運転し、原告主張の給油スタンドで給油したこと、右スタンドに近接する国道に於いて同日三時一〇分頃本件自動車後部と被害者運転の自転車(但し、自転車の車体自体か、被害者の身体であるかは当事者間に争いがあるのでこの点を除く)とが衝突したこと、右衝突により受けた傷害により被害者は同日午後一一時四〇分頃死亡したこと、は当事者間に争いがない(但し、死亡時刻は〔証拠略〕により認めるものであるからこの点を除く)。

(3)  山口の過失の有無について

(イ) 本件衝突地点について(本件訴訟記録中検証調書添付の現場見取図(一)、(二)、をここに引用し、以下単に図面(一)、(二)という)

証人高橋孝一は本件事故の時に山口の運転する本件自動車が図面(二)<3>の地点にあつた旨証言するけれども右証言は信用できず、〔証拠略〕を総合すると、本件自動車は本件事故の時には図面(二)<2>の地点にあつたこと、従つて被害者と右自動車は右地点に於いてて衝突したものと認められる。

(ロ) 本件衝突の時に本件自動車が後進中であつたか否かについて

〔証拠略〕を総合すると、被害者は本件自動車の後部右端付近に衝突したこと、被害者の運転していた自転車は全く破損していなかつたこと、右衝突後被害者は本件自動車の後部右端の後方約二・五メートル、右自転車の座席前部に同乗していた原告輝武は本件自動車の後部右端から約一・七メートル本件自動車の前方向から見て左側に各倒れていたこと、静止している自動車に被害者が原告輝武を同乗させて衝突したとすると右のような距離に両名が跳飛ばされることは通常考えられず、右のような距離に両名が跳飛ばされるには自転車の外部から力が加えられることが不可欠であること、被害者の受けた傷は右頭部やや後方に打撲傷、左環指に挫傷、左右肩胛部(左は前部、右は後部)に擦過傷の以上の傷のみであること、被害者は右の頭部の打撲(これは平面的な物体との衝突によるものと考えられること)による衝激で脳に損傷を蒙り、よつて前示のとおり死亡したこと、被害者の死因となつた頭部の打撲傷は被害者の運転する自転車がなんら外力の作用を受けることなくコンクリート舗装の路上に於いて顛倒して被害者が路上に頭部を打ちつけて生じたものとは考えられないこと被害者の運転する自転車に前示のとおり同乗していた原告輝武は本件衝突によつては額に軽い打撲を受けて「こぶ」ができたに過ぎず、その他右の衝突によつては僅に自転車の顛倒により膝を打つた程度の被害しか蒙つていないこと、が認められ、以上認定を覆すに足る証拠はない。右認定事実より判断すると、前認定の本件事故発生地点に原告輝武を同乗させた被害者運転の自転車がさしかかつた時に、山口の運転する本件自動車がその左前方から後進して来たため、右自転車の座席前部に同乗していた原告輝武は当時五才の小児であつて身体の位置が低かつたけれどもその後方に乗つていた被害者はその身体の位置が高かつたために同人の左肩胛部の前部が右自動車後部右端付近と接触し、(同所の傷はこの接触によるものと考えられる)よつて同人は本件自動車の後進による力を受けて前認定のとおり跳飛ばされてコンクリート舗装道路上に仰向に顛倒し、その結果死因となつた右頭部やや後方の打撲、右肩胛部後方の擦過傷及び左環指挫傷を受け、一方原告輝武は被害者と異なり本件自動車との直接の衝突はせず、被害者と本件自動車との接触による衝激を自転車を通じて間接的に受けたものに過ぎなかつたため単に自転車の顛倒により軽度の打撲を受けるに留つたものと考えられる。

右認定に反する〔証拠略〕の結果証人野口むつ子、同高橋孝一、同高橋金海、の各証言は信用できない。

(ハ) 山口の本件自動車後進の際にした誘導者配置等の注意又は配慮及び被害者の過失の有無について〔証拠略〕の結果及び検証の結果を総合すると、本件事故のあつた国道は被害者運転の自転車が進行して来た図面(一)雑色交叉点方向に関しては同交叉点に至るまで見通しが良好であること、山口は本件自動車の後進を誘導させるため関、森、訴外望月玉一(以下単に望月という)をその進行方向である自動車後方に配置したこと、右誘導にあたつた関、森、望月はいずれも誘導開始より終了に至るまで前認定の本件事故現場である図面(二)<2>付近から右交叉点に至る路上に自動車、自転車の存在を認めなかつたこと、右誘導を終了して本件自動車前部運転台の方向へ歩いて後、関は一五、六秒、森は一〇ないし一五秒、望月は一五、六秒各経過したときに同人等は本件事故の物音(同人等が自動車と自転車との接触音と考えたガチャンという音)を聞いたこと、被害者の運転していた自転車は変速機を装着していたけれども本件事故の時には同自転車に原告輝武を同乗させていたためにその速度は余り大でなかつたものであること、被害者運転の自転車はその進行方向から見て本件事故現場から約三五メートル離れた図面(一)x地点(宮田自転車工場と日本管鉄会社との間の路地)から国道に出て本件事故現場に向つたものであること、従つて右認定の関、森、望月が誘導を終了した丁度その瞬間頃に被害者運転の自転車は国道上に現われたものと考えられること、従つて同人等が更に一瞬間の監視を続ければ被害者運転の自転車を容易に認めえたこと、右時点に於いて本件自動車は後進完了直前であつたのでその位置は図面(二)<2>の地点付近であつたこと、従つて国道を本件事故現場の方向へ進行中の被害者は本件自動車が後進中であることを認め得たものと考えられること、が認められる。右認定の事実及び前認定の事実(本件衝突地点が図面(二)<2>の地点であること及び本件自動車が後進中であつたこと)を総合すると、右誘導者等は本件事故現場から見通しの良好な右交叉点から本件事故現場に至る路上に自動車、自転車の存しないことを確認し、本件自動車がまさに後退を完了しようとしていたので最早本件事故現場へ向う国道に通じる側道(被害者の現れた前示側道を含む)から国道上に自動車、自転車等が現われて本件事故現場へ向うことはないものと判断し、山口の運転する本件自動車が後進を完了する寸前、未だ後進継続中に各誘導を中止して本件自動車前方(運転台の方向)へ向つたものと推認するのが相当である。右認定に反する〔証拠略〕は信用できない。

よつて山口はその運転する本件自動車が完全に後進を終了して静止するまで、継続してその進行方向であり且つ自己が運転中である運転台から見通しの悪い自動車後方に誘導者を配置するなどして後進に伴う危険を避けるべきであるのに、前認定のとおり当初は万全の誘導者の配置をしながら、後進完了寸前に至り前認定の国道の閑散な交通状況に気を許し、同人等が不用意にも誘導位置を離れたままの状態下に本件自動車を後進させ、よつて被害者に自動車を接触させたものであり、同人は本件自動車の運転について注意義務を果さなかつたものと言わざるを得ず、結局同人は本件事故について過失責任を免れない。

一方、前認定のとおり被害者はその進行方向国道付近に後進中の本件自動車を容易に発見でき、又本件事故当時本件事故現場付近の国道上の交通が途絶え国道には自動車が存しなかつたので同人はなんらの危険に曝されることなく国道中央部は右後進中の自動車を避けるべく迂回し、又は停車するなどの手段がとれたのに、この手段を選ぶことなく漫然と進行を継続したのは本件事故発生につき同人にも過失ありと認めざるを得ない。

(4)  被害者の受けた損失及びこれに対する損害賠償請求権について

〔証拠略〕により被害者は日本鋼管株式会社に勤務していたこと、昭和三九年一月から同年一〇月までに現実に得た給与は合計金二五万二千六八〇円であり一か月平均二万五千二六八円であること、賞与は同年上半期分が金四万一七〇円であること、が認められ「特別の事情の認められない本件では同年度の給与は右一か月分平均給与の一二倍、金三〇万三千二一六円であり、」賞与は通常の場合会社に於いては年に二度上、下半期毎に支給されること、下半期分は上半期分を上回ることは経験則上明白であるけれども、この点に関する立証を欠く本件では下半期分の支給額は少くとも上半期分の支給額と同一額であるものと推認する。よつて被害者は同年度の総収入は金三八万三千五五六円と認められる。〔証拠略〕によれば被害者は妻原告増子、長男同輝武、長女同智代の四人家族であることが認められ、前認定の事実と総合して考えると同年度に於ける被害者の生活費は少くとも一か月金七千円を要したものと見るのが経験則上相当というべきである。

よつて被害者の純収益は同年度は一年につき金二九万九千五五六円と認められる。

前顕甲第一号証によれば被害者は大正一三年二月二三日生であることが認められ、昭和三五年に於ける三五年の男子の平均余命が三五・五五年、四〇年の男子の平均余命が三一・〇五年であることは公知の事実であり、従つて三六年の男子の平均余命は三四・六五年と認められるところ原告等は被害者の余命三二年、稼働年数もこれと同一と主張するけれども、右被害者の死亡当時には通常、会社に勤務する者は満五五年を以つて定年退職することは経験則上明白であるので、右年限を超えて稼働して収入を得べきであつた旨主張する原告等はこれを証明すべきであるところ本件に於いて右事実を認めるにたりる証拠はない。

よつて被害者は本件事故がなかつたならば将来一八年五月二日稼働して収入を得べきであつたものと認められる。

経験則上労働者の賃金が年年上昇の傾向にあることは明白であるから、被害者はその死亡当時得ていた右認定の純収入を超える収入を将来に亘り得べきことは容易に推測し得るところであるけれども、この点を認めるにたりる証明のない本件では結局右純収入を以つて被害者が将来に亘り取得し得べき純収入と推認するのが相当である。

よつて被害者は右一八年五月二日間に得べかりし純収入は五五一万八千四六四円四〇銭(計算方法は299556×18+299556×5/12+299556×2/365≒5518464.40・・・小数点以下第3位以下は切捨)である。

よつて被害者は本件事故によつて右金額の損失を受けたものと認められ、右損害の賠償として右金額からホフマン式計算方法により法定利率である年五分の割合による中間利息を控除した金五一五万一千四一一円五二銭(計算方法は、

<省略>・・・小数点以下第3位以下は切捨)を、被告に対して一時に請求し得べきところ同人に前示過失があるのでこれを斟酌し、結局金二五七万五千七〇五円七六銭を被告に対して一時に請求し得るものである。

(5)  原告等の被害者の有した損害賠償請求権の取得について

前顕甲第一号証により原告増子、同輝武、同智代は各被害者の配偶者及び子として被害者を均等の割合で相続したことが認められ、結局右三名は右認定の被害者の取得した損害賠償請求権の三分の一を取得したものであるから同人等は各金八五万八千五六八円五八銭(銭未満切捨)を被告に対して請求し得るものと言える。

(6)  慰藉料について

〔証拠略〕 右認定の被害者の職業、本件事故の態様及び被害の態様、被告の営業、原告等と被害者との親族関係、原告等の年令、等の諸般の事情を斟酌して慰藉料は原告長蔵については金二〇万円、同増子については金五〇万円、同輝武、同智代については各金二五万円を以つて相当と認める。

(7)  原告等の請求についてのまとめ

よつて原告長蔵は金二〇万円、同増子は金一三五万八千五六八円五八銭、同輝武、同智代は各金一一〇万八千五六八円五八銭の支払いを被告に対して各請求し得、又本件事故発生時から即時に被告は右各金員の支払につき遅滞に陥つているところ原告等は遅延利息の請求につき本訴状送達の翌日からの分についてのみその支払を求めており、本訴状送達の日が昭和三六年一二月一六日であることは当裁判所に顕著な事実であるから、結局原告等は被告に対し同年同月一七日から右各完済まで年五分の割合の民事法定利率による遅延利息を請求し得るものである。

二、結び

よつて原告等の請求は右の限度で理由があるから認容し、その余の請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、それぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 石田哲一)

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